エム奴隷の歓楽 -非日常の幸福論-
内容説明
石井有紗にとって、SMというものが心の隙間を埋めるのに十分であったかどうかは分からない。ただ前回MiRACLEの調教を受けた後、彼女が引き篭り生活から脱却し社会復帰に向けて動き出したのは事実である。とはいえこの不況の折、学歴もなくこれといった特技のない人間が簡単に就職できるはずもなかった。「地元で仕事を見つけるのは難しい、でも東京でなら見つかるかもしれない。」そんな期待と、悲しい思い出のある街を離れたい想いから、彼女は東京での1人暮らしを始める事にした。最初は仕事が見つかったら引越しをするつもりだったのだが、何度か東京の会社の面接を受けた際に、勤務開始日の問題などで断られる事が多く、それならばと思い切って貯金をはたいたのだ。東京に越して数日が過ぎ、面接を受ける毎日は続いていた。まだ朗報は届かない、だが彼女はそれほど落ち込んではいなかった。新しい部屋、新しい生活、もちろんそれもあっただろう。しかし実のところ一番大きかったのは、引越しのお祝いと称して、MiRACLEから再調教を打診されていた事だったのかもしれない―